オキシトシンは小鳥の家禽化関連遺伝子か?

 ジュウシマツという小鳥をご存知ですか?ジュウシマツはペットショップでみることができますが、日本の野生でみかけることはありません。実はジュウシマツ、1762年頃に中国から輸入されたコシジロキンパラを日本で家禽化した鳥です。子育て上手な形質が仮親として重宝され家禽化されて、19世紀半ば頃に色素が抜けた白化個体が現れたのがジュウシマツのはじまりだそうです。

 野生種のコシジロキンパラと比べて家禽種のジュウシマツは、攻撃性が低く、新規なものや場所への恐怖が少ないです。ストレス耐性があるためか、ストレスホルモンであるコルチコステロン血中濃度も低いです。また特筆すべきは、学習によって獲得する求愛歌が家禽種のジュウシマツの方がずっと複雑という点です。このような行動形質の違いはオキシトシン遺伝子と関連がありそうでした。

 私たちは、オキシトシン遺伝子の配列、脳内での遺伝子発現量、ペプチドホルモンの含量等をジュウシマツと野生種のコシジロキンパラの間で比較しました。同種にもかかわらず、野生種と家禽種間でオキシトシン遺伝子の配列が異なること、大脳では家禽種の方が遺伝子発現量が高く、間脳では野生種の方が発現量が高いことを明らかにしました。鳥類では、大脳のオキシトシンは攻撃性や群集性に関連していて、間脳のオキシトシンはストレス耐性に関与しているのではないかと考えられています。

 以上の結果を、Genes brain and behaviorオンライン版に発表しました。本研究には、学部生であった佐藤芳美さん、丸谷桃花さんと藤岡明香さんが貢献してくれました。


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