ジェネラリストとスペシャリストはどちらが有利なのか? - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部
理学部紹介冊子特集コンテンツ 自然界には、様々な環境に対応できる“ジェネラリスト”戦略をとる生物がいる一方で、特定の環境に特化した“スペシャリスト”戦略をとる生物もいます。このことは直感的にも理解しやすいことですが、一方で、「ではどちらの戦略が有利なのか?」「なぜ2つの戦略をとる生物が共存するのか?」といった根本的な疑問に対する俯瞰的・実証的な解析はされてきませんでした。本研究では、61種類の環境から得られた微生物群集大量シーケンスデータの解析と、多様な微生物グループにわたる進化解析とを組み合わせた生物情報科学的手法によって、ジェネラリストはスペシャリストに比べて高い種分化率と絶滅への耐性を持ち、子孫を繁栄させる上で有利であることを明らかにしました。加えて、ジェネラリストは進化の過程で容易にスペシャリストへと変わる傾向があることがわかりました。微生物生態系におけるジェネラリストとスペシャリストの共存のバランスは、こうした「ジェネラリストによって駆動される進化」によって保たれていると考えられます。微生物は海洋や土壌、そして大気まで地球上のあらゆる環境に存在し、生態系の根本を支えている不可欠な存在です。微生物は大型生物のように目には見えませんが、その代わり膨大な個体数が存在し、ダイナミックに環境の間で移動を――いわば“旅”を――しています。このように、生物が1つの環境に閉じ込められているのではなく環境の間を移動し続けているということからは、2つの有望な生存戦略、すなわち、なるべく多くの移動先の環境に適応できるようにする“ジェネラリスト”戦略と、逆に移動してくる他の微生物に負けないように特定の環境に特化する“スペシャリスト”戦略の存在が示唆されます。このことは直感的にも理解しやすいことですが、一方で、「ではどちらの戦略が有利なのか?」「なぜ2つの戦略をとる生物が共存するのか?」といった根本的な疑問に対する俯瞰的・実証的な解析はされてきませんでした。さて、近年の生物学では、DNA配列解析装置をはじめとした計測装置の大幅な機能向上により、生物のゲノム配列などの膨大なデータ(バイオビッグデータ)に基づいた生物情報科学的解析(注1)を行うことが可能になってきました。とりわけ微生物については、近年になって、培養が可能なごく一部の微生物のみを対象とした研究が主に行われてきた状況が一
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